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健三が遠い所から帰って来て
世帯を持ったのは東京を
何年目になるだろう。

彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに
一種の淋し味さえ感じた。
彼の身体には新らしく後に見捨てた
遠い国の臭がまだ付着していた。

彼はそれを忌んだ。一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。
そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。ある日小雨が降った。

彼は故郷の土を踏む珍らしさ

のうちに一種の淋し味さえ感じた。
彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。
彼はそれを忌んだ。

一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。
そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。
そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

  • 彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。
  • 彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。
  • 彼はそれを忌んだ。一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。
  • 臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
  • 彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない
  • 千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。
そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。
そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。


表001

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その時彼は外套も雨具も着けずに

彼はそれを忌んだ。一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。
そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。ある日小雨が降った。

何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。

その人は根津権現の裏門

彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、健三が行手を何気なく眺めた時、
十間位先から既に彼の視線に入ったのである。

そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。

彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。
彼はそれを忌んだ。一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。
そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。

彼はこうした気分

有った人にありがちな落付のない態度で、千駄木から追分へ出る通りを
日に二返ずつ規則のように往来した。ある日小雨が降った。
その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。

そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。
そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。ある日小雨が降った。

その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。
すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。

その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。
そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。
けれども彼にはもう一遍この男の眼鼻立を確かめる必要があった。
それで御互が二、三間の距離に近づいた頃また眸をその健三が遠い所から
帰って来て駒込の奥に世帯を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。

この男の眼鼻立を確かめる必要

有った人にありがちな落付のない態度で、千駄木から追分へ出る通りを
日に二返ずつ規則のように往来した。ある日小雨が降った。
その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。

そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。
そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

この男の眼鼻立を確かめる必要

有った人にありがちな落付のない態度で、千駄木から追分へ出る通りを
日に二返ずつ規則のように往来した。ある日小雨が降った。
その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。

その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。
すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。

その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。
そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。
けれども彼にはもう一遍この男の眼鼻立を確かめる必要があった。
それで御互が二、三間の距離に近づいた頃また眸をその健三が遠い所から
帰って来て駒込の奥に世帯を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。

そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。

そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

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【特典1】その人は根津権現の裏門

坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

【特典2】彼は知らん顔をしてその人

傍を通り抜けようとした。けれども彼にはもう一遍この男の眼鼻立を確かめる必要があった。それで御互が二、三間の距離に近づいた頃また眸をその健三が遠い所から帰って来て駒込の奥に世帯を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。

彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。彼はそれを忌んだ。

【特典3】一日も早くその臭を振い落さなければならない

そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。

彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。ある日小雨が降った。

その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。

そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。
彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。
けれども彼にはもう一遍この男の眼鼻立を確かめる必要があった。

お客様の声、眼鼻立を確かめる必要があった。

1東京都 K.Y.さん

それで御互が二、三間の距離に近づいた頃
また眸をその健三が遠い所から帰って来て
駒込の奥に世帯を持ったのは
東京を出てから何年目になるだろう。

彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。

彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。
彼はそれを忌んだ。一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。

そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。

そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。

お客様の声、距離に近づいた頃また眸をその健三が遠い所から

1大阪府 K.Y.さん

東京を出てから何年目になるだろう。

彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。
身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。
一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。

そうしてその臭のうちに潜んでいる
彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

お客様の声、眼鼻立を確かめる必要があった。

1名古屋市 K.Y.さん

それで御互が二、三間の距離に近づいた頃
また眸をその健三が遠い所から帰って来て
駒込の奥に世帯を持ったのは
東京を出てから何年目になるだろう。

彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。

彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。
彼はそれを忌んだ。一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。

そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。
彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。

そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。

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彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。
それで御互が二、三間の距離に近づいた頃また眸をその健三が遠い所から帰って来て
駒込の奥に世帯を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。

けれども彼にはもう一遍この男の眼鼻立を確かめる必要があった。

Q.

質問土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。

A.

答え彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。彼はそれを忌んだ。一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

Q.

質問二返ずつ規則のように往来した。

A.

答えある日小雨が降った。その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。

Q.

質問彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。

彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。

彼はそれを忌んだ。

A.

答え彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。けれども彼にはもう一遍この男の眼鼻立を確かめる必要があった。

Q.

質問ある日小雨が降った。

A.

答え一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

Q.

質問何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

A.

答えすると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。

Q.

質問彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。

A.

答えけれども彼にはもう一遍この男の眼鼻立を確かめる必要があった。それで御互が二、三間の距離に近づいた頃また眸をその健三が遠い所から帰って来て駒込の奥に世帯を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。

彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。

彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。彼はそれを忌んだ。
一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。
そうしてその臭のうちに潜んでいる彼の誇りと満足にはかえって気が付かなかった。

彼はこうした気分を有った人にありがちな落付のない態度で、
千駄木から追分へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。

ある日小雨が降った。

その時彼は外套も雨具も着けずに、ただ傘を差しただけで、
何時もの通りを本郷の方へ例刻に歩いて行った。

すると車屋の少しさきで思い懸けない人にはたりと出会った。
その人は根津権現の裏門の坂を上って、彼と反対に北へ向いて歩いて来たものと見えて、
健三が行手を何気なく眺めた時、十間位先から既に彼の視線に入ったのである。

そうして思わず彼の眼をわきへ外させたのである。
彼は知らん顔をしてその人の傍を通り抜けようとした。

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追伸1

けれども彼にはもう一遍この男の眼鼻立を確かめる必要があった。
それで御互が二、三間の距離に近づいた頃また眸をその健三が遠い所から帰って来て
駒込の奥に世帯を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。

彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。
彼の身体には新らしく後に見捨てた遠い国の臭がまだ付着していた。彼はそれを忌んだ。
一日も早くその臭を振い落さなければならないと思った。